ゆるや)” の例文
木下はゆるやかな足取りで大股に室から出て行った。信子は扉から壁へ沿って身をずらしながら、木下を通した。
二つの途 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
につたりとゆるやかに笑ひたまひ、婦女をんなのやうに軽く軟かな声小さく、それならば騒がずともよいこと、爲右衞門そなたがたゞ従順すなほに取り次さへすれば仔細は無うてあらうものを
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
大隅は、周章あわてて椅子の背から身体を起すと、電子望遠鏡を覗きこんだ。友の機影はどの位まで焦点を外したかと思いながら、注意して距離調整用のクランクをゆるやかに廻していった。
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
桟橋に立ってるとき北の岡のはざまから霧が吹き出してきたので今に島を包むかと思って眺めてたがゆるやかに湖をわたり東の山にそうていってしまった。秋になって霧が急にすくなくなった。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)