形而上学けいじじょうがく)” の例文
旧字:形而上學
自分じぶん大学だいがくにいた時分じぶんは、医学いがくもやはり、錬金術れんきんじゅつや、形而上学けいじじょうがくなどとおな運命うんめいいたるものとおもうていたが、じつおどろ進歩しんぽである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一度この思想にまで戻って考えることが、生活と娯楽という対立を払拭ふっしょくするために必要である。娯楽の観念の根柢こんていにも形而上学けいじじょうがくがなければならぬ。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
別に読もうという気もなしに、最初のペエジを開けて見ると、おもちゃの形而上学けいじじょうがくという論文がある。何を書いているかと思って、ふいと読み出した。
花子 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あらゆる非科学ことに形而上学けいじじょうがくのようなものと対照し、また認識論というような鏡に照らして批評的に見た上でなければ科学はほんとうには「理解」されるはずがない。
相対性原理側面観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
少くとも私には、それは欲求であり得る外価値を持っていない。神の世界に於ては、あるいは超越的形而上学けいじじょうがくの世界に於ては、かかることは捨ておかれぬ喫緊事として考えられねばならぬだろう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
身体的発表としての「いき」の自然形式は、聴覚と視覚に関するものと考えて差支ないであろう。そうして視覚に関してはアリストテレスが『形而上学けいじじょうがく』の巻頭にいっている言葉がここにも妥当する。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
ところが、それは大違い。きょうの矢部一太氏の講義にれば、この句は決して、そんな上酒一升、鴨一羽など卑俗な現実生活のたのしみを言っているのではなく、全然、形而上学けいじじょうがく的な語句であった。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
すべての魅力的な思索の魅力は瞑想に、このミスティックなもの、形而上学けいじじょうがく的なものにもとづいている。その意味においてすべての思想は、元来、甘いものである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
必要なのは、この言葉の意味を形而上学けいじじょうがく的な深みにおいて理解することである。さしあたりこの自然は一般的なものでなくて個別的なもの、また自己形成的なものである。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)