当麻たぎま)” の例文
旧字:當麻
姫様、当麻たぎまに御安著あんちゃくなされた其夜、奈良の御館へ計わずに、私にした当麻真人の家人たちの山尋ねが、わるい結果を呼んだのだ。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
二八六大倭やまとの神社に仕へまつる当麻たぎま酒人きびとといふ翁なり。二八七道のほど見たててまゐらせん。いざ給へとて出でたてば、人々あとにつきて帰り来る。
翁はあわてて惑う人々を案内して人家のある所まで伴れて往ってくれた。翁は当麻たぎま酒人きびとと云う神奴かんぬしの一人であった。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
志斐老女が、藤氏とうしの語部の一人であるように、此も亦、この当麻たぎまの村の旧族、当麻真人の「氏の語部」、亡び残りの一人であったのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
「いや、わしは神様などではない。大和神社おおやまとじんじゃの神官をしている当麻たぎま酒人きびとという年寄だ。おなじみちだから、道中見送って差し上げよう。さあ、まいりましょう」
志斐ノ姥が藤氏とうし語部かたりべの一人であるやうに、此も亦、この当麻たぎまの村の旧族、当麻ノ真人まひとうぢ語部かたりべだつたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
当麻たぎまむらまで、おとといの中に行って居たこと、寺からは、昨日午後横佩墻内かきつへ知らせが届いたこと其外には、何も聞きこむ間のなかったことまで。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
この思ひがけない心残りを、お詠みになつた歌だと、私ども当麻たぎまの語部では、伝へて居ります。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
今、当麻たぎま語部かたりべおむなが、神憑りに入るやうに、わな/\震ひはじめたのである。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
当麻たぎま信仰には、妙に不思議な尼や、何ともわからぬ化身の人が出る。謡の「当麻」にも、又其と一向関係もないらしいもので謂っても、「朝顔の露の宮」、あれなどにも、やはり化尼けにが出て来る。
山越しの阿弥陀像の画因 (新字新仮名) / 折口信夫(著)