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当惑
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たうわく
蘿月は一家の破産
滅亡の
昔を
云出されると
勘当までされた
放蕩三昧の身は、
何につけ、
禿頭をかきたいやうな
当惑を感ずる。
四十を越したお宗さんは「
形見おくり」を習つてゐるうちに
真面目にかういふことを尋ねたりした。この返事には誰も
当惑した。誰も? ——いや「誰も」ではない。
さう云はれて見ると、自分も急に
当惑した。宿の名前は知つてゐるが、宿の
町所は覚えてゐない。
然し電車の
通つてゐる
馬喰町の
大通りまで来て、
長吉は
何の
横町を
曲ればよかつたのか
少しく
当惑した。けれども大体の方角はよく
分つてゐる。東京に生れたものだけに道をきくのが
厭である。