当字あてじ)” の例文
旧字:當字
従ってヤトもまたヤツからの再転訛か、または「ヤの処」の義ではあろうが、これをある部落の地名とする場合には当字あてじの誤りと見ねばならぬ。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
六甲山はむこやまの当字あてじに最初書かれたのが漢字読みの山の名になつて居るのである。頂上に近く石がちに原をなして居る物は灌木で大方躑躅なのである。
註釈与謝野寛全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「どうしてでしょうね。きっと誰かがこしらえた当字あてじでしょう。……だけど、この二本の樹の姿を見ると、そんな名がなくても、いかにも歓び合っているといったような姿じゃありませんか」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここに書いたのはもちろん当字あてじである。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
種まきや当字あてじだらけの紙帒かみぶくろ 左岡
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
しかるに地図ができて文字を書き入れなければならぬようになって村の和尚おしょうなどと相談してこれをきめた。その文字は十中の八九までは当字あてじである。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あやしげな当字あてじや仮名まじりで、書風も至って稚拙ちせつであった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まして久しい間口でばかり呼んでいて、何か必要があって記録の上に、それも咄嗟とっさの間に文字にして掲げるのだから、当字あてじが必ずしも最初の意味を、代表しておらぬのは不思議でない。
和州地名談 (新字新仮名) / 柳田国男(著)