強意見こわいけん)” の例文
但し慾気のないのが取柄とは、ほかからの側面観で、同家のお辰姉たつねえさんの強意見こわいけんは、ややともすれば折檻賽せっかんまがいの手荒い仕打になるのである。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
……おふくろ、のら息子でも、たまにゃあ孝行してみせるから、また眼にかどたてて強意見こわいけんなど云いなさんなよ
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
永年にわたって役向きの非曲ひきょくを重ねていることを発見した鞍掛、砧の二人は、涙を流して忠告し、聴き入れなければ、上役に訴えてもとまで強意見こわいけんをしました。
母が食を止めて餓死するというまでの強意見こわいけん向後こうご喧嘩口論を致し、あるいは抜身の中へ割って這入り、傷を受けることがあらば母の身体へ傷を付けたるも同じである、以後慎め
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この義弟をつかまえて、ピストルを発射するな、弾丸を人様に命中させるなと強意見こわいけんを加えても、それは蛙のつらに小便、鰐の面に水のたぐいであって、とても義弟の行状を改めさせる効力のないことは
と新太郎君には父親の病気が何よりの強意見こわいけんだった。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
武門の家に男と生れて甲斐のない新九郎の性質は、無論兄の重蔵が強く顰蹙ひんしゅくするところであったから、今日までには幾百回の強意見こわいけんが繰り返されたか知れない。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と腹立紛れに粂之助の領上えりがみを取って引倒して実の弟を思うあまりの強意見こわいけん涙道るいどうなみだを浮べ、身を震わせながら粂之助を畳へこすり附ける。粂之助は身の言分いいわけが立ちませぬから
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「理窟じゃない、勘だよ。くわしく言えば三つうろこの紋と、旗本武鑑と、あの妹の萩野の顔色さ。——兄を諫め兼ねて、自分が縛られて、兄に強意見こわいけんをしようと思い込んだ一本気には驚いたね」
銭形平次捕物控:126 辻斬 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)