弁天島べんてんじま)” の例文
すみさんは、休屋やすみやはまぞひに、恵比寿島ゑびすじま弁天島べんてんじま兜島かぶとじまを、自籠じごもりいは——(御占場おうらなひばうしろにたる)——かけて、ひとりでふねした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と伊那丸が指したほうを見ると、いましも、弁天島べんてんじまの岩かげをはなれた一艘の小船に、五、六人の武士が乗りこんで、こなたの岸へかじをむけてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「八月と、八月は二十日まで弁天島べんてんじまにいた。弁天島を引上げると同時に東京へ来た。そして確か十日ばかりいた筈だから、二十三日は、無論東京にいた訳だよ」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
弁天島べんてんじまだよ、弁天島の姝な後家神ごけがみに、いたぶられたろう、ぐずぐずしよると生命いのちがないぜ」
牡蠣船 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それは、かれが東海をさかんに荒していたころ——といっても古い話ではない、伊那丸いなまる忍剣にんけんにわかれて、弁天島べんてんじまから八幡船ばはんせんのとりこになった時のこと——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、龍太郎はいつもながら、伊那丸のかしこさにしたをまいた。そのまに、船は弁天島べんてんじまへこぎついた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)