廻船問屋かいせんどんや)” の例文
その人たちのなかには、廻船問屋かいせんどんや時代の番頭さんとか、葉子の家の田地を耕しているような親爺おやじさんもあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
三十五たん帆が頻繁ひんぱんに出入りしたものだったが、今は河口も浅くなり、廻船問屋かいせんどんやの影も薄くなったとは言え、かつおを主にした漁業は盛んで、住みよいゆたかな町ではあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
河の氷がようやく崩れはじめ、大洋の果てに薄紫の濛靄もやけぶるころ、銀子はよその家の三四人と、廻船問屋かいせんどんや筋の旦那衆だんなしゅうにつれられて、塩釜しおがま参詣さんけいしたことがあった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
従って寿々廼家の旦那だんなである廻船問屋かいせんどんやの主人のおいであり、この町から出た多くの海員の一人で、中学を出たころすでに南洋にあこがれをいだき、海軍兵学校の入学試験をしくじってから
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
葉子は初め酒田あたりの風俗や、雪の里とばれる彼女の附近の廻船問屋かいせんどんやの盛っていたころの古いロオマンスなどを話して聞かせていたが、するうち飽きて来て、うとうと眠気が差して来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
廻船問屋かいせんどんやで栄えていた故郷の家の屋造りや、庸三の故郷を聯想れんそうさせるような雪のしんしんと降りつもる冬の静かな夜深よふけなみの音や、世界の果てかとおもう北の荒海に、幻のような灰色のかもめが飛んで
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)