康頼やすより)” の例文
成経なりつね様や康頼やすより様が、御話しになった所では、この島の土人もおにのように、なさけを知らぬ事かと存じましたが、——」
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
新大納言が隱謀もろくも敗れて、身は西海のはてに死し、丹波の少將成經なりつね、平判官康頼やすより、法勝寺の執事俊寛等しゆんくわんら、徒黨の面々、波路なみぢ遙かに名も恐ろしき鬼界が島に流されしより
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
丹波康頼やすよりは後漢の霊帝十三世の孫である。康頼八世の祖が日本に帰化して大和国檜隈郡ひくまのこほりに居つた。六世の祖に至つて丹波国矢田郡に分れ住んだ。康頼に至つて丹波宿禰の姓を賜はつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そうした晴れ渡った青空から、少しの慰めも受けないように、三人の流人たちは、疲れ切った獣のように、黙って砂の上にうずくまっている。康頼やすよりは、さっきから左の手で手枕をして、横になっている。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
すると康頼やすよりおこったぞ。ああ云う大嗔恚だいしんいを起すようでは、現世利益げんぜりやくはともかくも、後生往生ごしょうおうじょう覚束おぼつかないものじゃ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おれもその船を見た時には、さすがに心がおどるような気がした。少将や康頼やすよりはおれより先に、もう船の側へ駈けつけていたが、この喜びようも一通りではない。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
附記 盛衰記に現れた俊寛は、機智に富んだ思想家であり、つるまへを愛する色好いろごのみである。僕は特にこの点では、盛衰記の記事に忠実だつた。又俊寛の歌なるものは、康頼やすより成経なりつねよりつたないやうである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)