庶幾しょき)” の例文
蘇子、白居易が雅懐も、倶利迦羅紋紋の兄哥あにいが風流も詮ずるところは同じ境地、忘我の途に踏み入って煩襟を滌うを得ば庶幾しょきは已に何も叶うたのである。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
人いづくんぞ常にあしからむ、縁に遇へば則ち庸愚ようぐも大道を庶幾しょきし、教に順ずるときんば凡夫も賢聖に斉しからむことを思ふと、高野大師の宣ひしも嬉しや。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ねがわくは将来右の『植物志』と同様、否な、それ以上の立派な仕事が出来る人が日本に生まれ出て、その誇りとする出来栄えを世界万国に示されん事を庶幾しょきする次第だ。
臆病おくびょうな、安全を庶幾しょきする心がけを暴露するものだということに帰着するようだ。
片信 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
しかしながら予の庶幾しょきするところは、その階級に属する一員の生活の叙述によりて、三隅ともに挙げ得るまでには行かないでも、せめてこれによって縉紳界の一半位をば想知することを得せしめ
わが日本各地の植物方言をあつめているのだが、今日でもなおその手を緩めてはいなく、従って得れば従って録しておく事を怠らなく、一つでも沢山にその数の増加せん事を庶幾しょきしている。
思うに村人ことごとく眠り去って、灯影の漏るるところたまたま我が小屋あるのみ。彼行くに所なくして、あえてこの無一物裡に一物を庶幾しょきし来れるにあらざらんや。庭辺一片の食なし。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
燕王の言に曰く、始め難にう、むを得ずして兵を以てわざわいを救い、誓って奸悪かんあくを除き、宗社を安んじ、周公しゅうこうの勲を庶幾しょきせんとす。おもわざりき少主予が心をまこととせず、みずから天に絶てりと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)