平然けろり)” の例文
健は平然けろりとして卓隣つくゑどなりの秋野といふ老教師と話を始める。校長の妻は、まだ何か言ひたげにして、上吊つた眉をピリ/\させながら其處に立つてゐる。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
健は平然けろりとして卓隣つくゑどなりの秋野といふ老教師と話を始める。校長の妻は、まだ何か言ひたげにして、上吊うはづつた眉をピリ/\させながら其処に立つてゐる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、校長は気毒相きのどくさうな顔をしながら、健には存在ぞんざいな字で書いた一枚の前借証を返してやる。渠は平然けろりとしてそれを受取つて、クル/\と円めて火鉢にべる。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
然う言つた健の顏は、もう例の平然けろりとしたさまに歸つたゐて、此上いくら言つたとて動きさうにない。言ひ出しては後へ退かぬ健の氣性は、東川もよく知つてゐた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
然う言つた健の顔は、もういつも平然けろりとしたさまに帰つてゐて、此上いくら言つたとて動きさうにない。言ひ出しては後へ退かぬ健の気性は、東川もよく知つてゐた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さればといつて、家にゐる時の叔父は、矢張平然けろりとしたもので、別段苦い顔をしてるでもなかつた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
そして、日がな一日、塵程の屈托が無い様に、陽気に物を言ひ、元気に笑つて、誰に憚る事もなく、酒を呑んで、喧嘩をして、勝つて、手当り次第に女を弄んで、平然けろりとしてゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お由は寢床に入つてからも、五分か十分、勝手放題に呶鳴り散らして、それが止むと、太平な鼾をかく。翌朝になれば平然けろりとしたもの。前夜の詫を言ふ事もあれば言はぬ事もある。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お由は寝床に入つてからも、五分か十分、勝手放題に怒鳴り散らして、それがむと、太平たいへいいびきをかく。翌朝になれば平然けろりとしたもの。前夜の詫を言ふ事もあれば言はぬ事もある。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
渠は平然けろりとしてそれを受取つて、クル/\と圓めて火鉢にべる。淡い焔がメラ/\と立つかと見ると、直ぐ消えて了ふ。と、渠は不揃ひな火箸を取つて、白くなつて小く殘つてゐる其灰を突く。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)