平内へいない)” の例文
浅草公園の売茶の店は、仁王門のわきの、くめ平内へいないの前に、弁天山へ寄って、昔の十二軒の名で、たった二軒しか残っていなかった。
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その八五郎が、美しい下女のお菊の動静を見張っているうち、浅草の日参と、御神籤おみくじと、くめ平内へいない様の格子の謎を見付けたのです。
伊織の祖母貞松院ていしょういんは宮重七五郎方に往き、父の顔を見ることの出来なかった嫡子平内へいないと、妻るんとは有竹の分家になっている笠原新八郎方に往った。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
観音の地内は、仁王門から右へ弁天山へ曲がる角に久米くめ平内へいないいかめしい石像がある(今日でもこれは人の知るところ)。久米は平内妻の姓であるとか。
若い女が真昼に酒を飲むなぞとは妙な事でございましょうか? それにはそれなりの事情があるのでございます。久米くめ平内へいない様は縁切りのかみさんじゃなかったかしら……。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
平家の大将軍には小松の新三位中将資盛、同少将有盛、丹後侍従忠房、備中守師盛、侍大将には伊賀平内へいない兵衛清家、海老えみの次郎盛方が任ぜられ、勢三千余騎で三草山の西麓に押し寄せて陣を張った。
そうでなければ浅草のくめ平内へいないだ、おれをふみつけさえすれば、男女の縁は結んでやる、とこういう功徳の神様になって、罪滅ぼしをやりてえもんだが、さて、その小手調べが、どうなるものかなあ
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その八五郎が、美しい下女のお菊の動靜を見張つてゐるうち、淺草の日參と、お神籤みくじと、くめ平内へいない樣の格子のなぞを見付けたのです。
肩の丸味などは矢張り三角で久米の平内へいないの肩のよう……これには閉口しました。
「もう一度行きますよ、親分。明日は姿を變へて平内へいない樣のお堂の前に頑張ぐわんばつて、三日分ばかり兵糧ひやうらうを背負つてつけたらどんなもので——」
肩の丸味などはやはり三角で久米くめ平内へいないの肩のよう……これには閉口しました。
「一日もかしません。その上、引いたお神籤を八つに疊んで、仁王門外のくめ平内へいない樣の格子に結はへる」
「一日も欠かしません。その上、引いた御神籤を八つに畳んで、仁王門におうもん外のくめ平内へいない様の格子こうしに結わえる」