干魚ほしうお)” の例文
人目を避けて、うずくまって、しらみひねるか、かさくか、弁当を使うとも、掃溜はきだめを探した干魚ほしうおの骨をしゃぶるに過ぎまい。乞食のように薄汚い。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……酔いしているアイヌの酋長しゅうちょうを、その家族たちの眼の前で絞殺して、秘蔵のマキリ(アイヌが熊狩りに用いる鋭利な短刀)一ちょうと、数本の干魚ほしうおを奪い去った。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かれらは、明日は別れなければならぬひと時の食事に、塩した干魚ほしうおをかじりながらも幸福だった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸しすんばかりずつに切って干したのを、干魚ほしうおだと云うて、太刀帯たてわきの陣へ売りにんだわ。疫病えやみにかかって死ななんだら、今でも売りに往んでいた事であろ。
羅生門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
干魚ほしうおの上をとび舞ふ浜暑し
六百句 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
人目を避けて、うずくまつて、しらみひねるか、かさくか、弁当を使ふとも、掃溜はきだめを探した干魚ほしうおの骨をしゃぶるに過ぎまい。乞食こじきのやうに薄汚うすぎたない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)