帰趣きしゅ)” の例文
しかし僕はもうずっと先きの方まで読んでいますが、この脚本の全体の帰趣きしゅというようなものには、どうも同情が出来ないのです。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そうしてこの帰趣きしゅなくしては、工藝の美は花を開かないであろう。「多」に活きることに、工藝の全き存在があるのである。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
意気の俊邁しゅんまいなるに至っては、たがいあいゆずらずといえども、正学先生せいがくせんせいの詩はついに是れ正学先生の詩にして、其の帰趣きしゅを考うるに、つねに正々堂々の大道に合せんことを欲し、絶えて欹側きそく詭詖きひの言をさず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私たちは知を養い知を越える世界に進まねばならぬ。「無念」が往くべき吾々の帰趣きしゅである。美は知にも属せず、不知にも属しない。ただ無念の境にのみその故郷がある。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)