巻藁まきわら)” の例文
旧字:卷藁
また庭の幾所に巻藁まきわらが両断されて転がっていることによって、この家に住む人が試し物をするのだということが想像できるのであります。
備前岡山三十五万石の領主池田光政みつまさは、文武の道にくわしい古今の名君であったが、武芸のなかでは特に弓が好きで、城中居間の側に巻藁まきわらを備え
備前名弓伝 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
徒らな松の吊縄、藁のかげ法師、植木の巻藁まきわらなどはよくよく考へてから、その位置を作らなければならぬ。
冬の庭 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
最初は巻藁まきわら、それから、身分の者ははばかった刑場の二つ胴試し、ツイ悪友に誘われて、その頃によくあった辻斬を試みてから、次第に病的な嗜好しこうが高じて、江戸の街の闇を横行して
銭形平次捕物控:126 辻斬 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「それはそうであろう、伯耆の安綱ともいわれる刀で犬猫も斬れまいし、滅多に土壇どだん巻藁まきわらをやっても物笑い、それこそ宝として飾って置くが無事だわい」
「応ッ、望むところだ。が、何を斬るつもりだ。巻藁まきわらなどは嫌だぞ」
竹刀しないだこのある手で桑の葉を刻み、巻藁まきわらをほぐして、まぶしを作ろうという騒ぎだ。
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)