巴理パリ)” の例文
ところがやはり気に入った名がない。友人を連れて無暗むやみにあるく。友人は訳がわからずにくっ付いて行く。彼等はついに朝から晩まで巴理パリを探険した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と友人の迷惑はまるで忘れて、一人嬉しがったというが、小説中の人間の名前をつけるに一日いちんち巴理パリを探険しなくてはならぬようでは随分手数てすうのかかる話だ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
万事あたまの方が事実より発達してゐるんだから、あゝなるんだね。其代り西洋は写真で研究してゐる。巴理パリの凱旋門だの、倫敦ロンドンの議事堂だの沢山つてゐる。あの写真で日本を律するんだからたまらない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
原口さんは洋行する時には大変な気込で、わざ/\鰹節かつぶしを買ひ込んで、是で巴理パリの下宿に籠城するなんて大威張だつたが、巴理へ着くや否や、たちまち豹変したさうですねつて笑ふんだから始末がわるい。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃ巴理パリ籠城ろうじょうした組じゃないのね」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「無論模造です。本物は巴理パリのルーヴルにあるそうです。しかし模造でもみごとですね。腰から上の少し曲ったところと両足の方向とが非常に釣合がよく取れている。——これが全身完全だと非常なものですが、惜しい事に手が欠けてます」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)