巨石おおいし)” の例文
とその中を、すらりと抜けて、つまも包ましいが、ちらちらと小刻こきざみに、土手へ出て、巨石おおいし其方そなたの隅に、松の根に立った娘がある。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やがて、夜の明けぬうちにと、何事かいそぎ始めて、大蔵のさしずのもとに、一本松の下の巨石おおいしをとりのけると、一人はくわをもってそこを掘り始めた。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「見ろ、この太縄を切って落せば、五人は道具部屋の中で巨石おおいしに打たれて塩辛になって死ぬばかりだ」
欝蒼としたけやきえのき、杉、松の巨木に囲まれた万延寺裏手の墓地外れに一際目立つ「蔵元先祖代々之墓」と彫った巨石おおいしが立っているのが、木の間隠れに往来から見える。
はたけ一帯、真桑瓜が名産で、この水あるがためか、巨石おおいしの瓜は銀色だと言う……瓜畠がずッと続いて、やがて蓮池はすいけになる……それからは皆青田あおたで。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といって、土台深くに「百万一心」と刻んだ巨石おおいしを埋めたことがある。このことは元就在世中からたえず藩士のたましいへ家訓としてうち込まれていたものである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はたると、渠が目に彩り、心に映した——あのろうたけた娘の姿を、そのまま取出して、巨石おおいしの床に据えた処は、松並木へ店を開いて、藤娘の絵を売るか
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それだけでも、驚くに足る人間の死力であるのに、その縄尻の巻きつけてある何十貫もあろう巨石おおいしが、この瀕死の傷負ておいが引っ張る力で、ズル、ズル……と一、二尺ずつ前へ動いて来たからである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
巨石おおいしの角へ向ってほうり投げた。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)