巧々うまうま)” の例文
まつたくもつて、巧々うまうまペテンにかかつたのである。とはいふものの、さて熟々つらつらふりかへつてみるに、はなから臭いと思はないのが不思議であつた。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
(ああさすがは老先生だ。捕物にかけては、まったく神だ。どうして、この二人が、あとからいて来るのを知って、巧々うまうまおびき寄せたのだろうか)
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おおさいかにも紋十郎じゃ、おおかたこうと眼を付けて、計られると見せて置いたら、いつかこっちのつぼはまり、女さかしゅうして牛売り損ない、可愛い男をうぬが手で、巧々うまうま死地へ落とし入れたなあ。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
巧々うまうま陥穽かんせいにおびき込んで、その二人だけは生け捕ったが、なおまだ、かんじんな張清のほうは、あれあのように、戦塵漠々せんじんばくばくと乱軍の中をけ廻って味方をなやまし、ほとんど
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そ! ……それを! ……自分から手をまわしたのは、貴様の高僧めかしたことばに巧々うまうまたばかられたのだ。たとい縄目にはかけても、このような生き恥をかかせはしまいと信じたからだ」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)