巣喰すく)” の例文
これを見ると、彼女の身内には、生れながらに、世に恐るべき悪魔が巣喰すくっていて、今その正体を現し始めたものであろうか。
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人差指は、材木に巣喰すくって肥え太った鉄砲虫のように見える。そのとき彼の前では、自分の五本の指が全然別な生きものとしてうごめきあっている。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
この裏通りに巣喰すくっている花柳界も、時に時代の波をかぶって、ある時は彼らの洗錬された風俗や日本髪が
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……平和な国土を我物顔に跳梁ちょうりょうする憎むべき賊どもが巣喰すくっているのだ!
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
「浅草公園とは思いがけなかったね。まさかやっこさん公園に巣喰すくってるんじゃあるまいね。こんなにぎやかな場所に」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
相手が相手だから、こんどこそ巧く行くに違いない——彼は一応そう信じたが、信じたくもなかった。浮気の虫も巣喰すくっていたが、それも彼女のはてしない寂しさをたすに足りなかった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
伊志田邸に立ちこめる悪鬼ののろいは、うら若き女性の心に巣喰すくうハイドであったのだろうか。
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
早くもその裏町に巣喰すくったカフエの灯影ほかげやレコオドの音が流れていたが、表通りの雑音が届かないし、上がり口のちがった背中合せの部屋に、たまに人声がするだけで、どの部屋にも客がないので
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「情熱の虫がこの体に巣喰すくっている!」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)