川面かはも)” の例文
川面かはもも段々夜の色になり、近々と腰かけてはゐるのだが、娘の顏もほの白く見えるばかりだつた。充分川幅の廣いところで、三田はオールをあげて舟を流れに任せた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「今朝、——變な手紙を受け取つたのだよ。今晩、五つの鐘を合圖に、兩國橋の上から川面かはもを見張つて貰ひたい。六人の人が死ぬ。それも選り拔きの美しい娘ばかり——といふ文句だ」
なんでも雨上あまあがりの葉柳のにほひが、川面かはもを蒸してゐる時だつた。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
川面かはもを通る船に支障がなければ、大概たいがいのことは大眼に見られ、佐渡屋の裏の水面に乘出した危ないやぐらもこの夜の興を添へる、一つの企畫きくわくとして、面白がられ、はやされ、うらやましがられて居たのです。
折から花は眞つ盛り、日和は上々、向島の土手の上は人間で盛りこぼれ相で、川面かはも遊山船ゆさんぶねで一杯、小僧の一人や二人が向島へ駈け出したところで、花見船を見付けることなどは思ひも寄りません。