峻坂しゅんはん)” の例文
此れより山間の屈曲せる処を通る。径路あるも、然れども予が目には知る事あたわざるなり。数回すかい川を渡り、峻坂しゅんはんを登り、オヨチに至る。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
提灯の火影に照らして、くらき夜道をものともせず、峻坂しゅんはん嶮路けんろおかして、目的の地に達せし頃は、午後十一時を過ぎつらん。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
日も暮よ、夜も来よと自暴やけの気味であるが私もかなり疲れて居るから励ます言葉も出ない。只どうにかして例の丈なす草にうずもれた峻坂しゅんはんを下る間だけなりと、暗黒まっくらにしたくない。
武甲山に登る (新字新仮名) / 河井酔茗(著)
晦日かいじつ。越河ノ駅ニ抵ル。コレヨリ以北ハ仙台藩ノ旧封域ニ係ル。今ハ白石県ノ管内ニ入ル。一峻坂しゅんはんユルヤ巌石縦横ニ路ヲさえぎル。騎シテ過レバ石ハあぶみト相磨ス。俗因テ磨鐙あぶみすり坂トイフ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)