岩淵いわぶち)” の例文
小児心こどもごころに取って返したのがちょうさいわいと、橋から渡場わたしばまでく間の、あの、岩淵いわぶちの岩は、人を隔てる医王山のいちとりでと言ってもい。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東海道筋から甲州入りの順路は、岩淵いわぶちから富士川に沿うて上ることであります。甲州へ入ると、富士川をさしはさんで二つの関があります。
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
岩淵いわぶち等々力とどろきの両人に案内されて、さっきこの広間へはいってきた若い武士を一眼見ると、サッ! と顔いろを変えて峰丹波をふりかえりました。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
後は実力の如何いかんである。疾風の迅さで、彼の兵はすでに、但馬たじまに入り、山口、岩淵いわぶち、また竹田城を落していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
岩淵いわぶちの辺甘蔗畑かんしょばたけ多くあり。折から畑に入るゝ肥料なるべし異様のかおり鼻を突きて静岡にて求めし弁当開ける人の胸悪くせしも可笑しかりける。沼津を過ぐれども雨雲ふさがりて富士も見えず。
東上記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
岩淵いわぶち渡場わたしば手前に、姉のせがれが、女房持で水呑百姓をいたしておりまして、しがない身上みのうえではありまするけれど、気立のい深切ものでございますから、私もあてにはしないで心頼りと思うております。
政談十二社 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)