屋前やど)” の例文
天平十一年夏六月、大伴家持は亡妾を悲しんで、「妹が見し屋前やどに花咲き時は経ぬわが泣く涙いまだ干なくに」(巻三・四六九)という歌を作っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
屋前やどふる土針つちばり心従こころゆおもはぬ人のきぬらゆな
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
「秋さらば見つつしのべと妹が植ゑし屋前やど石竹なでしこ咲きにけるかも」(巻三・四六四)と作っているが、共に少し当然過ぎて、感に至り得ないところがある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
また、巻十(一八八九)の、「吾が屋前やど毛桃けももの下に月夜つくよさし下心したごころよしうたて此の頃」という歌は、譬喩ひゆ歌ということは直ぐ分かって、少しうるさく感ぜしめる。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)