少女心おとめごころ)” の例文
昔を思い出して御覧になると、えんに美しいみかどが別れを惜しんでお泣きになるのを、少女心おとめごころにおいたわしくお思いになったことも目の前に浮かんできた。
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
手提てさげを取り上げた。彼女の小さい心は、今狂っていた。もう何の思慮も、分別も残っていなかった。たゞ、突き詰めた一途いちず少女心おとめごころが、張り切っていた丈である。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
なんという、いじらしいことかと、彼女かのじょ少女心おとめごころにもふかかんじたのでありました。
谷にうたう女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうした敬虔けいけんな心持ちは、彼女の胸にいつまでもりへらされずに保たれていたゆえ、彼女がつくらずして可憐であり初々しいのだ。彼女の胸にはつねに、少女心おとめごころを失わずにいたに違いない。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
少女心おとめごころ浅墓あさはかにも、近所の家にけありし着物を盗みたるなりとぞ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
女二の宮はまして若い少女心おとめごころにお心細くも悲しくも思い沈んでおいでになろうことを、哀れに気がかりに思召す帝は、四十九日が過ぎるとまもなくそっと御所へお呼び寄せになった。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)