小抽斗こひきだし)” の例文
おあいは、細帯一つになって、燈心をほそめ、櫛は、行燈台の小抽斗こひきだしにいれた。そして床にはいったが…………そのとき、ふいに目をさました。
(新字新仮名) / 室生犀星(著)
そうして小抽斗こひきだしから幾つかの小判の包みを取り出して、無雑作に懐中へ入れました。それからまた例の頭巾ずきんかぶりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
用箪箭の小抽斗こひきだしの鍵と、お文のくしと、与七の紙入だけは出なかったということが、この菱餅の中に隠された鍵と暗合するのではなかったでしょうか。
と今の乱暴を見て中二階から降りてきたお米は、お吉を慰めてやろうとする前に、足の踏み場もなく散らかっている小抽斗こひきだし反古ほごなどを片づけ始めた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
薬箪笥くすりだんす小抽斗こひきだしを抜いては、机の上に紙を並べて、調合をするですが、先ずその匙加減さじかげん如何いかにもあやしい。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「鍵を渡す。大切な預り金だけれど、満代の身には換えられぬ。鍵はこの次の間の、金庫の隣の箪笥たんすにある。上から三つ目の小抽斗こひきだしの、宝石入れの銀の小匣こばこの中だ」
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
みのるの用箪笥の小抽斗こひきだしには油にんだ緋絞りのてがらの切れが幾つも溜つてゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
女はまたたく間に、数の多い、どこかそこらの箪笥たんす小抽斗こひきだしにそれを隠してしまった。
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
「まあれったい、その右の小さい方の小抽斗こひきだし
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
小抽斗こひきだしの左の端ということ丈は分った。
接吻 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)