寝棺ねかん)” の例文
何です、これは、縁起の悪い、ひつぎではありませんか、寝棺ねかんではありませんか。おおいやだ、寝棺が捨てられてある。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
八時頃、昼間三谷の指図で注文した大きな寝棺ねかんが届けられ、一同で斎藤老人の死骸をその中に納めた外には。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
柩は寝棺ねかんである。のせてある台は三尺ばかりしかない。そばに立つと、眼と鼻の間に、中が見下された。中には、細くきざんだ紙に南無阿弥陀仏なむあみだぶつと書いたのが、雪のようにふりまいてある。
葬儀記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして静かにミチミの亡骸を、寝棺ねかんのなかに入れてやったのであった。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「これが、私の寝棺ねかんです」
桜島 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
寝棺ねかん、 三個。
これは昨晩、お雪ちゃんをおびやかした白木の寝棺ねかんです。あのは一目見たきりで、おびえて逃げたけれども、この怪物にとっては、これもまた餌食にはなるらしい。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
車内には、よく見ると、たしかに白布で覆った寝棺ねかんがのせてある。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
広間の真中へ置かれた一つの新しい寝棺ねかん。その中には、当主であるべき例の淫乱の後家さん、白骨谷の通語でいえば、イヤなおばさんの亡骸なきがらが、白布に覆われて、いとも静かに置かれてある。
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)