密夫みそかお)” の例文
でなければ物真似ものまねの道化に尽きていた為に、こうした密夫みそかおの狂言などに、たのまれるような前代の名優の仕残した型などは、微塵みじんも残っていなかった。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
傳「実は申上げようはございませんが、もう往来も途切れたから申上げますが、御新造様は誠にしからん、密夫みそかおこしらえ遊ばして逢引を致しますので」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しらばッくれるな。密夫みそかお如海にょかい坊主が、巧雲の寝間にもぐり込んでいるだろうと、訊いているんだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
密夫みそかおと云う彼にとっては、いまだ踏んでみた事のない恋の領域の事を、この四五日、一心に思い詰めていた為だろう。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この狂言に比べましては、七三郎殿の『浅間ヶ嶽』の狂言もわらべたらしのように、曲ものう見えまするわ。前代未聞の密夫みそかおの狂言とは、さすがに門左衛門様の御趣向じゃ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
弥五七 (道化方らしく誇張した身振りで)さればこそ前代未聞の密夫みそかおの狂言じゃ。傾城買けいせいかいにかけては日本無類の藤十郎様を、今度はかっきりと気を更えて、密夫にしようとする工夫じゃ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
弥五七 昨日ちょっとある所で、聞いた噂じゃが、藤十郎どのは、今度の狂言の工夫に悩んだ揚げ句、ある茶屋の女房に恋をしかけ、密夫みそかおの心持や、動作しぐさの形を付けたということじゃが、真実ほんとうかのう。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
密夫みそかおの身のこなしが、とんとたまらぬと京女郎たちの噂話じゃ。
藤十郎の恋 (新字新仮名) / 菊池寛(著)