宿端しゅくはず)” の例文
宿端しゅくはずれや問屋場の附近は、なおさらであった。ここでは穀類や乾菜かんさいや、塩、味噌、粉、干魚、鰹節かつおぶしなどの俵とかごと袋で幾つも山ができていた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……伊兵衛は吉田の宿端しゅくはずれへ来たとき、昨日までそこに立って、客を待っていた自分の姿を思いだし
雪の上の霜 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
とりの声を聞くと、彼はもう木賃を出ていた。そして島田の宿端しゅくはずれで待っていた。果たして、まだ朝霧の中を、弥五郎一刀斎と善鬼のすがたが彼方から見えた。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木之本は、山の東麓とうろくに沿う街道の一宿駅で、山上軍の一部は、ここにたむろし、宿端しゅくはずれのあざ地蔵じぞうという所には、屋根なしの井楼せいろう(物見やぐら)を設けて斥候陣地としていた。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今し方まで、宿端しゅくはずれの撞木橋しゅもくばしの上で、金毘羅詣こんぴらまいりの男と、気のはやい三度飛脚が、つまらぬ間違いから喧嘩を起して、往来の旅人が、足をとめて、真っ黒にたかッていた。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)