家隷けらい)” の例文
僕の忠実な家隷けらいフランソアが「すぐに出せ」と云ふ命令と共に、それを受け取るや否や、今物を書いてゐる此机の引出しから、僕は拳銃を取り出して
不可説 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
橋谷はついて来ていた家隷けらいに、外へ出て何時なんどきか聞いて来いと言った。家隷は帰って、「しまいの四つだけは聞きましたが、総体の桴数ばちかずはわかりません」
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
主は家隷けらいを疑い、郎党は主を信ぜぬ今の世に対しての憤懣ふんまんと悲痛との慨歎がいたんである。此家このやの主人はかく云われて、全然意表外のことを聞かされ、へどもどするより外は無かった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
意気地なしのバクホス様は忠義な家隷けらいにも余り構わずに
己は中央に吊る燭台の明かりをためすために、窓を締めて窓掛を卸すことを、家隷けらい共に命じた。真つ暗でなくては、明かりの工合が分からぬからである。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
高禄をくれても家隷けらいちたいほどの者ではある。……しかし大すじのことが哀れや分って居らぬ、致方無い、教えの足らぬ世で、忠義の者が忠義でないことをして、忠義と思うて死んで行く。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大勢の家隷けらい共が心得貌にすばしこく、あちこちと
一群ひとむれ剽盗おひはぎが馬車を取り巻いた。中にも大胆な奴等が馬の鼻の先で松明たいまつを振ると、外の奴等は拳銃の口を己達に向けた。己達の連れてゐた家隷けらいは皆逃げてしまつた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
将門の家隷けらい伊和員経いわのかずつねといふ者も、物静かに将門を諫めたといふ。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あいつが女中で、あいつが家隷けらいです。