威信いしん)” の例文
「上に聞えて面白くないばかりか、庶民に対しても御番部屋の名折れ、延いては千代田のお城の威信いしんにも関することだ」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
まず肉でもなんでもやって品物を放させたのち、犬を捕まえにかかればよかったのだ。警察は法規と威信いしんにかまけて思慮がたらなかったといわれてもぐうのも出まい。
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
軽侮を受けたのなら生徒の行為に斟酌しんしゃくを加える理由もありましょうが、何らの源因もないのに新来の先生を愚弄ぐろうするような軽薄な生徒を寛仮かんかしては学校の威信いしんに関わる事と思います。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
モウ武士の威信いしんもうちわすれて、武者振りつく拍子に、その手が着ものの裾にかかれば、逃げまどう萩乃は、われとわが力で着物を引いて、あられもない姿になりながら
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところが、ドイツの旗色が悪くて、留学生はいずれも英仏へられそうである。こうなるとドイツの誇るいわゆる文化クルツウル威信いしんにもかかわる問題だ。政府はいつしか躍起やっきになっている。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ロス氏と誘拐ゆうかい者は、その利害において一致しているわけで、ロス氏さえ物質上の損をすれば、チャアリイは完全にロス氏の手へ返るはずだったが、警察は警察で、威信いしんということもあれば
チャアリイは何処にいる (新字新仮名) / 牧逸馬(著)