妬忌とき)” の例文
七出というのは、子無きが一、淫佚いんいつが二、舅姑きゅうこつかえざるが三、口舌くぜつ多きが四、盗窃が五、妬忌ときが六、悪疾あくしつが七である。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
理財にもけ、落合にある病院などもうまくやり、理知と世才に事欠くように見えなかったが、内実は、悪念のさかんな、妬忌ときと復讐の念の強い、妙にげた陰鬱な性情らしく
予言 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
柏軒が春を納れたのは、俊のこひに従つたのだと伝へられてゐる。推するに女丈夫にして妬忌ときの念のなかつた俊は、四人の子を生んだ後、身の漸く疲顇ひすゐするを憂へて此請をなしたのであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
恐らくは妻妾の妬忌ときしなかつたのも貞淑の為ばかりではなかつたであらう。
僻見 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たとえば定基の妻にしても妬忌ときの念が今少しすくなかったら如何に定基が力寿に迷溺めいできしたにせよ、強いて之を去るまでには至らなかったろうと想われる。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やむをえず、座敷へ戻って腕をこまぬいて考えていたが、俺の胸にあったのは、忿怒でもなく、悲哀でもなく、妬忌ときの念でもなく、どうして体面を膳おうかというそのことであッた。
湖畔 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)