妙義みょうぎ)” の例文
傘をさして散歩に出ると、到るところの桑畑は青い波のように雨に烟っている。妙義みょうぎの山も西に見えない、赤城あかぎ榛名はるなも東北にくもっている。
磯部の若葉 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
上州の妙義みょうぎ榛名はるなでも猟師・木樵の徒、山中でこの物を見るときは畏れてこれを避けたと、『越人関弓録えつじんかんきゅうろく』という書には説いてある。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼にはまた、久しぶりで山地に近い温泉場まで行き、榛名はるな妙義みょうぎの山岳を汽車の窓から望み、山気に包まれた高原や深い谿谷けいこくに接するという楽みがあった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
群馬県に入りますと、赤城あかぎ榛名はるな妙義みょうぎの三山が目にうつります。ふもとに高崎や前橋の如き大きな町はありますが、その山間で一番興味のある古い町は沼田ぬまたでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
妙義みょうぎの山も西に見えない。赤城あかぎ榛名はるなも東北に陰っている。蓑笠みのかさの人が桑をになって忙がしそうに通る、馬が桑を重そうに積んでゆく。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが何か理由があって、伊勢三郎は妙義みょうぎ山麓に隠れ住み、それが最初の家来として召し抱えられたことにしなければならなかった。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
上州は江戸よりも秋風が早く立って、山ふところの妙義みょうぎの町には夜露がしっとりとりていた。
半七捕物帳:22 筆屋の娘 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)