女親おんなおや)” の例文
牝牛めうしちちのようにあま女親おんなおやなみだのなかに、邪気じゃきも、よくも、なにもなく、身をひたりこんだ蛾次郎がじろうのすがたを見ていると、だれもかれに少しのにくしみも持てなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よその母親が手をかれてゆくのを、うしろからバッサリ斬るくらいな無情さは平気で持ちあわす男であって、自分の女親おんなおやのこととなるとから意気地のない特殊な愛情の持主だ。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、蛾次郎のからだをきしめて、あまやかな女親おんなおやなみだをとめどなく流すのだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)