奔激ほんげき)” の例文
千曲は流れもゆるく、瀬も浅いが、犀川はそれにくらべるとはるかに奔激ほんげきしていた。この川すじの水量が最も浅くれるのは、真夏の七月が頂上である。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渦まく瀬へ、一抱えの落葉を投げこんだように、その奔激ほんげきすがたは、同じであっても、落葉の一葉一葉の驚きや、動作や、意思は、各〻めいめい違ったものであった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼にも、足利公方あしかがくぼうの義昭と、どこか共通している錯誤さくごと性格があったのである。時代の奔激ほんげきをあくまで甘く見て来た顕門けんもんのお坊ッちゃんは——こうして次々に溺れてゆくしかなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つかる所でぶつかり、分れては幾条いくすじにもなり、水と石と高低の多い土地とが、噛みあい、奔激ほんげきし合って、やや落着いている所はまた、身を没しるようなかやの沼地というような原始的な姿だった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)