太織ふとおり)” の例文
秩父はその銘仙めいせんで名を成しますが、昔のような太織ふとおりはもうほとんど影をひそめました。伊勢崎は同じ銘仙一点張りで進んでいますが、これに対し桐生きりゅうは何でも作ります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
お由は半纏羽織はんてんばおりを脱いで袖畳みにして居りますと、表の格子戸をガラリッと明けていってまいりました男は、太織ふとおりというと体裁がうございますが、年数を喰って細織になった
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
湯にって顫えたものは古往今来こおうこんらいたくさんあるまいと思う。湯から出たら「公まずねぶれ」と云う。若い坊さんが厚い蒲団ふとんを十二畳の部屋にかつむ。「郡内ぐんないか」と聞いたら「太織ふとおりだ」と答えた。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
立せざる樣になしそつと立ち出でお專に向ひ如何に盜賊どろばうは此中に居たりしやと聞きければお專打ち笑ひ實に盜人ぬすびと猛々たけ/″\しとは虚言ならず今しも後より入り來られ上より八番目に居りたる年若にて色白く太織ふとおり紋付もんつき羽織はおりにて棧留さんとめの着物を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)