天眼鏡てんがんきょう)” の例文
雨谷はおどろいて天眼鏡てんがんきょうを出すと、動く釜をしげしげながめた。かれはしきりに頭をふった。釜は元気づいてカニのようにたたみの上をはいまわる。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
児雷也じらいやが魔法か何か使っているところや、顔より大きそうな天眼鏡てんがんきょうを持った白い髯の爺さんが、唐机とうづくえの前に坐って、平突へいつくばったちょんまげを上から見下みおろすところや
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
たくみに、逃げ口上をいって、はずすのではないかと、弦之丞の懸念けねんも、お綱の眼も、そういう相手の顔色を、天眼鏡てんがんきょうの向うに置くように見つめたが、お久良の素振そぶりには
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
算木さんぎや、筮竹ぜいちくや、天眼鏡てんがんきょうといったようなものが置き散らされてあることで、これとても、この室の調子を破るというほどではないが、算木とか筮竹とかいうようなものが、お銀様は嫌いなのです。
天眼鏡てんがんきょうで物々しく見てから、その掌を指でたどって
ふところより天眼鏡てんがんきょうを取出して、萩原を見て。
その上彼はこの婦人の机の上に、筮竹ぜいちく算木さんぎ天眼鏡てんがんきょうもないのを不思議にながめた。婆さんは机の上に乗っている細長い袋の中からちゃらちゃらと音をさせて、穴のいたぜにを九つ出した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
雨谷君は、とつぜん天眼鏡てんがんきょうをひっこめてぽんと膝をうった。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)