大幅おおはば)” の例文
その中に月の光りが、大幅おおはばの帯をくうに張るごとく横に差し込む。吾輩は前足に力を込めて、やっとばかり棚の上に飛び上がろうとした。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
荒川あらかわ放水路が北方から東南へ向けまず二筋になり、葛西川かさいがわ橋の下から一本の大幅おおはばの動きとなって、河口を海へかしている。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
一ばん先に欲しがられた雀こ、大幅おおはばこけるどもし、おしめの一羽は泣いても泣いてもえへんでば。
雀こ (新字新仮名) / 太宰治(著)
波斯絹布ペルシャけんぷを買わんかな! 大幅おおはば一丈が二円とはどうだ! 安売安売、大安売じゃ!」
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼はそこにたたずんだまま、しばらくはただあたりの机をめつけたように物色していたが、やがて向うの窓を洩れる大幅おおはば薄日うすびの光の中に、余念なく書物をはぐっている俊助の姿が目にはいると
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)