夜具蒲団やぐふとん)” の例文
旧字:夜具蒲團
「次の間にもいません、夜具蒲団やぐふとんはちゃんといま畳んだように、きれいに畳んでありますが、本人はいずれにも見えません」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御米は卒然何とも知れない恐怖の念におそわれたごとくに立ち上がったが、ほとんど器械的に、戸棚とだなから夜具蒲団やぐふとんを取り出して、夫の云いつけ通り床を延べ始めた。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
顔を磨きたいと思ったら料理法を研究して食物で色を白くするがよい。西洋人は滅多めったに入浴せんけれども毎日襯衣はだぎを取かえたり、夜具蒲団やぐふとんのシーツをとりかえるからあかが身につかない。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
多分、昨夜の夜もすがらの煩悶はんもんが、心をものうくしたものでしょう。この男は大抵の場合には、夜具蒲団やぐふとんを用いないで寝られる習慣を持っている。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
食事の不味まずい事、夜具蒲団やぐふとん綺麗きれいに行かない事、などを書き連ねているうちに、はや三尺余りの長さになったので、そこで筆をいたが、公案に苦しめられている事や
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから旅亭やどやへ着くと夜具蒲団やぐふとんからぜんわんさら小鉢こばちまで一として危険ならざるはなし。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
なるほど、そこに夜具蒲団やぐふとんは敷かれてあり、枕もちゃんと置いてありましたけれど、主は藻脱もぬけのからであります。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)