外界そと)” の例文
「はい代々井上嘉門が支配いたして居りました。……で、この秘密を保つために、逸見三家は家憲として、外界そととの交際を避けて居りました」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
世のちまたに駆けめぐる人は目のみを鋭く働かしめて耳を用いざるものなり。衷心うち騒がしき時いかで外界そとの物音を聞き得ん。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そこだけ、時のながれが、ゆるやかに淀み、そこだけ、外界そとを搏つあらあらしい空気が、ゆつくり、和らぎなごんでゐる。和らぎなごんでゐる、としか思はれない。
独楽 (新字旧仮名) / 高祖保(著)
悪戯小僧が隠れておりはせぬかと外界そとを見廻したり、胡散くさそうに空気の匂いまで嗅ぎ廻す時のように、長いげじげじ眉の下からキョトキョトと始終あたりを窺っている。
「山岸主税の申しまするには、お館の中に居る女の内通者が、外界そとの賊と気脈を通じ、昨夜裏門にて密会し……」
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これが苦手にがてでございます。こっちで巧らむことぐらいは、先方で見抜いてしまいますので、どうでもこれは外界そとからの手を、お借りしなければなりませんが、誰か助け手はないものかしら?
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何故だろう? 狭い紙帳を天地とし、外界そとと絶ち、他を排し、自分一人だけで生活くらすようになったからである。そういう生活は孤独生活であり、孤独生活が極まれば、憂欝となり絶望的となる。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ではその辺に外界そとへ通う、洞穴の口でもあるのだろうか?
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)