夕餐ゆうげ)” の例文
兎も角もランプをつけて、東京からおはちごと持参じさんの冷飯で夕餐ゆうげを済まし、彼等夫妻は西の六畳に、女中と三吉は頭合せに次の六畳に寝た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それは蒔絵まきえ高脚膳たかあしに向う常の夕餐ゆうげより食味をそそッて、不なれにあぐらを組む居心地までが、万太郎にはたまらなく解放された気分です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丁度自分が、お祖父樣ぢいさま父樣とうさま母樣かあさま姉樣ねえさま一所いつしよに、夕餐ゆうげ團欒まどゐ最中さなかに、此の聲が起るのだからたまらない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いざお祭りの夕餐ゆうげを始めようとしたとき、あの人は、つと立ち上り、黙って上衣を脱いだので、私たちは一体なにをお始めなさるのだろうと不審に思って見ているうちに
駈込み訴え (新字新仮名) / 太宰治(著)
菓子などが客の夕餐ゆうげに代えて供えられてあった。従者にも食事が出してあった。
源氏物語:49 総角 (新字新仮名) / 紫式部(著)
旅舎を出てから、「よく森彦さんは、ああして長くひとりで居られるナア」と思ってみた。電車で新宿まで乗って、それから樹木の間を歩いて行くと、諸方ほうぼうの屋根から夕餐ゆうげの煙の登るのが見えた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
自分は急いで夕餐ゆうげまして、はしを投出すと直に、螢籠をぶらさげて、ぷいとうちを飛出すのであツた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)