夕炊ゆうげ)” の例文
ともしがついて夕炊ゆうげのけむりが家々から立ち上る時、すべてのものが楽しく休むその時にお寺の高いとうの上からんだすずしい鐘の音が聞こえておにであれであれ
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
さて、夕炊ゆうげも終って後、幸村おもむろに「この陣所は戦いに便なし、いざ敵近く寄らん」
真田幸村 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
村落のまわりには夕炊ゆうげの煙がたなびいて、西の空は赤く夕映に彩られていた。帰り後れた二三の鳥が、ねぐらを求めて空を飛んでいた。遠くに牛の鳴く声が長く響いて、そのまま静に日が暮れていった。
土地 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)