増々ますます)” の例文
現代の新婦人連は大方これに答えて、「そんなお人好ひとよしな態度を取っていたなら増々ますます権利を蹂躙じゅうりんされて、遂には浮瀬うかむせがなくなる。」
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここにこの里の荘官しょうやの家に、月丸つきまる花瀬はなせとて雌雄ふうふの犬ありけり。年頃なさけかけて飼ひけるほどに、よくその恩に感じてや、いとも忠実まめやかつかふれば、年久しく盗人ぬすびとといふ者這入はいらず、家は増々ますます栄えけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
丁度その月も晦日近く、慶三は増々ますますこの事のみに心を費しながら、夜も十時頃今夜は宿とまり込むつもりで妾宅の格子戸を明けようとすると、家の中で何やらしきりに高声に云いののしる男の声が聞える。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)