堺筋さかいすじ)” の例文
堺筋さかいすじ今橋の事務所から、一とまたぎの距離なので帽子もかぶらずに昇降機に走り込み、電車通りを横切って向う角の三越へけ付けた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そして暗く静かなそのころの堺筋さかいすじへ出て夜半と元朝がんちょうここちよく冷たい静寂の空気を味わうのであった。ところがなかなか父が起きて来ない。
いそいそとその傍について堺筋さかいすじの電車道を越えたとたん、もう道頓堀の明るさはあっという間に私のからだをさらって、私はぼうっとなってしまった。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
と云って訪ねて行く分には可笑おかしくあるまいと思案して、その日貞之助は少し早めに事務所を出て堺筋さかいすじを歩いて行った。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
現在の堺筋さかいすじほとん上海シャンハイの如くであるがその島之内に私の生れる以前からぶら下っている足袋たびの看板が一つ、そしてその家は昔のままの姿で一軒残っている。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
そいから二人えんタクに乗って堺筋さかいすじの電車通りの今橋の角で主人おろしまして私はずっとその車で天王寺い行きます。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
私の家のあった堺筋さかいすじは、今こそ、上海シャンハイ位いの騒々しさとなってしまったが、その頃はまだ大阪に電車さえもなかった時代だ。ちょっと裏手へ入るとかなりの草むらや空地あきちが沢山にあったものだ。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)