堰堤えんてい)” の例文
水電の堰堤えんていが破れても同様な犠牲を生じるばかりか、都市は暗やみになり肝心な動力網の源が一度にれてしまうことになる。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
今になっても、身分の隔りが堰堤えんていのような一線を彼らは知っている。従って彼らは彼らの意志を、神山外記の口を通して表現するつもりであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
その正面こそ大同電力の白い白いダム堰堤えんていである。古典的の幽邃ゆうすい奇峭きしょうとはここに変転して、近代の白と灰銀かいぎんとの一大コンクリート風景を顕現けんげんする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
なぜなら堰堤えんていについての彼の知識から判断するとそんなに急な角度には砂があるはずはない、というのであった。
まず浮津川うきつがわの川尻から海中に向けて堰堤えんていを築き、港の口に当る処には、木材を立て沙俵すなだわらを沈めて、防波工事を施すとともに、内部を掘鑿くっさくして、東西二十七間南北四十二間
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ついでのことにスエズ運河の堰堤えんていってしまおうじゃないか。
女坑主 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
堰堤えんてい工事の起重機や汽車の運動は、見ているとめまいを起こすほどであるが、しかしその編集法はやはり静的で動的でない。
映画雑感(Ⅲ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
全国至るところにある発電所の堰堤えんていのどれかが、たとえば大地震のためにこわれたら、その時には人間の弱さがはっきりわかるであろう。気の狂った動物園の象ぐらいの事ではすまない。
軽井沢 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)