うず)” の例文
床には粗目あらめのズックようのものが敷いてあって、その上に不用な調度類が、白い埃を冠ってうず高く積まれてあった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
工場の中も荒れていてうず高く塵が積もっていたが打見たところ諸種すべての機械は各自おのおのその位置に在るらしかった。
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
青物もやはり奥へゆけばゆくほどうず高く積まれている。——実際あそこの人参葉にんじんばの美しさなどは素晴すばらしかった。それから水にけてある豆だとか慈姑くわいだとか。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
絶えて人が踏みこまぬものだから、森の中には落葉がうず高く積み、日暮れ前からふくろうがホウホウと鳴く。
顎十郎捕物帳:01 捨公方 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
西日をうけた河原のところに玉石を混ぜた砂礫がうず高くもりあがっていた。どこから押し流されて来たのか、過ぎし洪水の威力を思わせる大木が、まだ枯葉をつけたまま土砂に埋れていた。
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)