基督教キリストけう)” の例文
予は即座に自殺を決心したれども、予が性来の怯懦けふだと、留学中帰依きえしたる基督教キリストけうの信仰とは、不幸にして予が手を麻痺まひせしめしを如何いかん
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
何の機会きつかけからか、話は、信仰問題に落ちた。もつとも二人共に基督教キリストけうへ籍を置くゆゑ、自然そこへ行つたのだらう。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
そこへ行くと、基督教キリストけうつてものは結婚式も引きうけるし、にぎやかな宗教だよ。何も、百貨店や料理屋ばかりで、何十組もの結婚式を引き受ける事はないやね。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
眞赤な合歡花ねぶのはなの咲いて居る沙漠の水際に、埃及人エジプトじんが何時覺めるとも知らず、ごろ/\晝寢をしてゐるのを見て、私は囘々教ふい/\けうと云ふものは基督教キリストけうより遙に悟つたものだ。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
さういふ時にこれまで人に聞いたり本で読んだりした仏教や基督教キリストけうの思想の断片が、次第もなく心に浮んで来ては、直ぐに消えてしまふ。なんの慰藉ゐしやをも与へずに消えてしまふ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
学殖のある紳士——先づ資産のある大学教授位の位置ところとする、女主人公の未亡人と、此の大学教授の細君とは、学校朋輩で、殆んど姉妹同様の間柄、そして此の教授夫人は、基督教キリストけう信者の
未亡人と人道問題 (新字旧仮名) / 二葉亭四迷(著)
信子は編物の針を動かしながら、近頃世間に騒がれてゐる小説や戯曲の話などもした。その話の中には時によると、基督教キリストけうの匂のする女子大学趣味の人生観が織りこまれてゐる事もあつた。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
すべて信仰によらぬ事は罪なりと語られてゐる通り、基督教キリストけうだつてこんな判りきつた事を云つてゐるのですから、まして、日本の国の大日向教が、罪多い人間の魂に喰ひ入つてゆかない筈はないね。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)