坐直すわりなお)” の例文
もう幕が開く処、見物は残らず場所へ坐直すわりなおしている、ここらは大阪は行儀が可いよ。それに、大人で、身のった芝居ほど、運動場は寂しいもんです。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と、深川オペラ劇場主人は坐直すわりなおして、腹にひとつ力を入れた。今しがた夕めし食つてきた筈であつたが、さつきから、だうも奇妙にお腹のすいた感じである。笑ひごとではない。
盗まれた手紙の話 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
益々顔を皺めながら文三が続いて起上ろうとして、叔母に呼留められて又坐直すわりなおして、不思議そうに恐々おそるおそる叔母の顔色をうかがッて見てウンザリした。思做おもいなしかして叔母の顔はとがッている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
坐直すわりなおると、肩の按摩が上へ浮いて、門附の衣紋えもんしまる。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)