地曳網じびきあみ)” の例文
浜で漁師が地曳網じびきあみを揚げる時などには、今でも子供や老女が来て盗むのみか、事によると飛びまわるかもめの数が、魚の数よりも多いかと思う折もある。
家へ無断で泊ってはしかられるから、明日の晩泊ってもかまわないようにして来ると云って帰って来たが、朝になって兄の太郎たろうは、地曳網じびきあみのかまえをするつもりで
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
秋の中過なかばすぎ、冬近くなるといずれの海浜かいひんとわず、大方はさびれて来る、鎌倉かまくらそのとおりで、自分のように年中住んでる者のほかは、浜へ出て見ても、里の子、浦の子、地曳網じびきあみの男
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それは、ちょうど地曳網じびきあみをおろしたといった恰好であった。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それは地曳網じびきあみを曳こうと云っているところであった。そして、権兵衛と総之丞が近ぢかと寄って往くと、老人は驚いたようにしてうちの内へ入って往ったが、家の中から
海神に祈る (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すなわちおそらくは村内の寡婦が、稲作作業の全体に参加していた頃からの遺風かと思う。漁業の方でも地曳網じびきあみなどの獲物に対しては、カンダラと称して至って鷹揚おうようなる分配法が認められている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)