国府台こうのだい)” の例文
市川の町に来てから折々の散歩に、わたくしははからず江戸川の水が国府台こうのだいの麓の水門から導かれて、深く町中に流込んでいるのを見た。
葛飾土産 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この話は長谷川伸君から聞いた話であるが、長谷川君は日露えきの際、すなわち明治三十七年の暮に、補充兵として国府台こうのだいの野砲連隊へ入営した。
戦死者の凱旋 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
この境内に立つと、根岸田圃ねぎしたんぼから三河島村みかわしまむら、屏風を立てたような千住せんじゅはんの木林。遠くは荒川あらかわ国府台こうのだい筑波山つくばさんまでひと目で見渡すことが出来る。
平賀源内捕物帳:萩寺の女 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
右翼の松林の中には、国府台こうのだいの野戦重砲兵聯隊がかくれているのだ。さっきから、腕が鳴って、むずむずしている。
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
古い意味の寺の境内もまた堀之内と呼ばれた。たとえば下総しもうさ国府台こうのだい総寧寺の天正三年の制札に「一つ寺中の堀之内陣取るべからざる事」とある(嘉陵紀行二編三)。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
また武蔵野のあじを知るにはその野から富士山、秩父山脈国府台こうのだい等を眺めた考えのみでなく、またその中央につつまれている首府東京をふりかえった考えで眺めねばならぬ。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夷灊いしみ館山たてやま素藤もとふじの居城)というは今も同じ地名の布施村や国府台こうのだいに近接する立山たてやまであろう。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
次第に高くなって行く道が国府台こうのだいの方へと降りかけるあたり。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)