国分寺こくぶんじ)” の例文
運動場は代々木の練兵場ほど広くて、一方は県社○○○神社に続いており、一方は聖徳しょうとく太子の建立こんりゅうにかかるといわれる国分寺こくぶんじに続いていた。
死屍を食う男 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
寄宿舎の二階の窓近く大きな花を豊かに開いた木蘭もくらんにおいまでがそこいらに漂っているようだった。国分寺こくぶんじ跡の、武蔵野むさしのの一角らしいくぬぎの林も現われた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
聖武天皇は仏教に依つて、国家を治めようと思召し、天下泰平、国土安穏あんをんを祈らせ給うて、国毎に国分寺こくぶんじを建てられ、総国分寺として奈良の東大寺を建立された。
二千六百年史抄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
それは美濃の垂井たるい宿しゅく国分寺こくぶんじ割印わりいんした遍路切手へんろきってで、それを持って国分寺にゆけば、この三月の中旬に、阿波八十八ヵ所の遍路にのぼる道者船どうじゃぶねの便乗をゆるされるということだ。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
木部との恋に酔いふけって、国分寺こくぶんじくぬぎの林の中で、その胸に自分の頭を託して、木部のいう一語一語を美酒のように飲みほしたあの少女はやはり自分なのだろうか。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)